株式会社タバッキ / tabacchi

Tabacchi Journal

経験ゼロから挑んだ料理人への道。德永 智志の「わたしの7Stories」

① わたしのタバッキとの出会い

五島列島に住んでいたこともあり幼い頃から自然が好きで、環境問題に携わる仕事が面白そうだなと思い神奈川の大学で農学部系の学科へ進学しました。卒業後は害虫駆除の会社で4年ほどサラーリーマンをしたあと、将来を見据えて地元で公務員になろうかなと考え、一旦長崎へ戻りました。

でもちょうどその頃、イタリア修行から帰ってきた友人が地元にイタリアンの店を出すということで手伝うことに。学生時代からよく自炊していましたし、そこで教えてもらううちにますます料理が好きになりました。

1年ほど働くなかで、やっぱり日本の飲食業界の中心である東京に一度は出たいという思いが強くなり、長崎からひとり車で上京。働きたいと思えるお店を納得行くまで探したくて、車中泊などをしながら10軒ほど回りました。そんななか「リ・カーリカ」を訪れたところちょうど満席で、隣駅のお店なら席がありますよと「カンティーナ カーリカ・リ」を案内されました。そこでピンと来るものがあったんです。でも接客してくれた藤田には、「全然そんなふうには見えなかった!」と言われたんですけどね(笑)。

「カーリカ・リ」で食べたアクアパッツァは素朴さも豪快さもあって美味しかったですし、店の雰囲気もいいなと思い働きたいなと思いました。それで翌日、お店に電話をかけたのが2017年のことです。面接当日は関東で何十年かぶりに11月に大雪が降った日で、車の中で寒くて目が覚めました(笑)。の第一印象はエネルギッシュな人。当時2店舗を展開していて、現場に立たず仕入れで全国を走り回っていると聞き、そうやってスタッフに仕事を任せてくれる職場なら働きやすいし、僕にもチャンスが回ってくるだろうと思いました。

面接では「料理人としては初心者ですが働かせてほしい」と伝えました。自分以上に経験年数がある年下の先輩もいましたが、歳の差は気にしていなかったです。飲食に入ろうと決めた時点で自分はこれで食べていくと決意していましたから、とにかく低姿勢で頑張ろうと。最初は「カーリカ・リ」のホール作業からはじめ、掃除やセッティング、ホールでの準備をすぐに終わらせ、少しでも仕込みに入れるよう動いていました。ワインの知識はあまりなかったので、例えば「赤の重いもの」が何かといったところから石黒に教えてもらいました。

② わたしのタバッキでの役割

「リ・カーリカ ランド」の厨房を任されている立場で、先輩と後輩の間に立っていろいろと動けるのが、自分の強みであり役割かなと思っています。そのため先輩たちのサポートや後輩たちへの指導など、全体の仕事が回るようにクッション材となるよう考えて動いています。

あとは自社商品の販路・手順を決める販売促進部と、料理開発研究部のレシピ化係にも所属しています。将来、長崎に帰ったら地元食材を使った商品を販売できたらいいなと思っていたので、自社商品の組み立て方からネット販売の仕方など基礎から勉強できるのが楽しいです。

③ わたしのイチオシ

ピチの麺です。2021年1月に「リ・カーリカ ランド」へ異動してすぐにピチを自社製品として作ることが決まり、今までと水分量を変えず冷凍しても美味しくなるよう、茹で方から試行錯誤を重ねました。ピチだけでお腹いっぱいになるくらい一日中試食していたほどで、ピチの麺に関しては僕がタバッキで一番作っていると思います。1〜2週間で完成させたのですが、やっぱり出来に納得がいかないと改良版を手紙付きで再送も。その決断をする堤と、それに対応できるスタッフみんなのスピード感も、うちの強みだと思います。

ピチは、現在3種類。「ピチ アリオーネ」「ピチ アラッビアータ」「ピチ ボロネーゼ」のどれもおすすめですが、わたしのイチオシは「ピチ アラッビアータ」です(笑)。おかずの一品に加えるにも、小腹が空いたときにも、どんなシチュエーションにもハマる味だと思います。

④ わたしの仕事道具

エプロンを締ると、「さあ今日も一日やるか!」とスイッチが入るんです。このエプロンは、持っているなかでも一番のお気に入り。タバッキに入社する際、合羽橋で仕事道具を揃えたときに買ったものです。道具は何でも大切に扱いたいので、物持ちは良いほうだと思います。長崎にいた頃は腰に巻くサロンを使っていたんですが、タバッキはエプロンのほうが店の雰囲気に合っているし作業もしやすい。ジーンズ生地は丈夫ですが重くて肩が凝ったり動きづらかったりしますけど、このエプロンはうちみたいにスピード感が求められるお店にピッタリです。ペンやメモ帳も入れて機能性をアップしています。何かを作ることも好きなので、そのうち自分でエプロンを作ろうかなと現在いろいろ検証中です。

⑤ わたしの好きなこと

料理雑誌を買って読んだりはしているんですけど、これという趣味を見つけられていなくて、今は探し中ですね。でも最近トミー(高橋智樹)と釣りに行こうという話をしていて、アウトドアを始めようかなと。キャンプなど自然の中で遊ぶことが好きなので、家族でどこかへ出かけるための下準備の期間です。

⑥ わたしのモットー

“幸せ”って何だろうと考えたときに、僕は仕事が楽しくないと幸せになれないと思うんですよね。でも楽しく仕事をするためには、努力が必要だと痛感していて。会社に入ったばかりだと「楽しく仕事をする=楽をする」と考えがちなんですけど、楽しく仕事するには努力して技術を身に付けて、そこでやっと“楽”じゃなく“楽しい”が見えてくる。それをどう作っていくか、後輩にどう教えどう支えてあげるか……。そういうことを考えながら日々働いています。

⑦ これからのわたし

料理に関してはまだまだ未熟ですが、料理人としてワンステップあがらなければいけない時期に来ていると思っています。料理開発研究部の3人の力も借りて、もっと上へ挑戦していきたいです。また「リ・カーリカ ランド」の厨房を率いる立場としてどう動くべきかも、もっと考えなければなと。お客さんの前で料理を提供することが減ってしまったのを逆手に取って、今はインプットの時間にできたらいいなと思います。

<プロフィール>
德永智志、1988年生まれ、長崎県諫早市出身、O型。大学は生物資源科学部へ進み、新卒で害虫駆除企業に入社。約4年サラーリーマン勤めをしたのち、故郷の長崎へ戻り友人が開いたイタリアンレストランで働く。その後単身上京し2018年タバッキに入社。「カンティーナ カーリカ・リ」「あつあつ リ・カーリカ」「リ・カーリカ」と各店を経験。2021年1月より「リ・カーリカ ランド」に異動し、「プロジェクトピチアリオーネ」を牽引。現在「ランド」の厨房を任されている。

企画/金沢大基(iD)文/木口すず 写真/倉橋マキ