株式会社タバッキ / tabacchi

Tabacchi Journal

ワインを愛し過ぎる男・石黒誉久の「わたしの7 Stories」

① わたしのタバッキとの出会い

以前働いていた自由が丘の店「ワインセラー事業部」の社長が「リ・カーリカ」を気に入っていて、店のメンバーと一緒に食べに来たのが最初です。かなり期待して来たのですが、その期待を裏切らないどころか感動しました。

少し料理が物足りない印象もあったのですが、最後に肉料理とワインを一緒に食べた時に、あえて料理で少し控えた部分をワインがぴたっと埋めた感じで…「あ、完成した!」と。その時キッチンに立っていた堤に、その感想を一方的に熱く伝えて帰ったことを覚えています。

当時のぼくは、将来は独立して自分の店を持ちたいと考えていました。「リ・カーリカ」はサイズ感もちょうどよくて、確実にレベルアップもできる店だと思って2014年に入社することにしました。

ちなみに、ぼくの名前はヤスヒサなのですが、入社して初めての飲み会で、堤から「お前、テツヤっぽいな」と言われ、そこからずっとテツヤと呼ばれています。何がどうしてテツヤになったのかは謎ですが、不思議と自分でも違和感はありません(笑)。

② わたしのタバッキでの役割

現在は「カーリカ・リ」の店長と、ワイン部として全店のワインのセレクトを担当しています。

ワインと本気で向き合うようになったのは、タバッキに入ってからですね。当時から「リ・カーリカ」には毎晩のように料理業界の人たちが飲みに来ていました。「これ、うまいっすよ」というノリだけでは通用しませんでしたから、必死で勉強もしました。ワインについての正しい知識を得て、イタリアで現地の生産者や畑を見て、どんなふうにこの液体ができているのかを知って、だんだんとナチュラルワインへの思いが変わっていきました。

いまはワイン部部長としてタバッキ全店のワインを管理していけるように、体制を整えているところです。各店によってお店のカラーが違うので、それぞれどういうワインを出して行くべきか話したり、勉強会をやっています。

たとえば「あつあつ リ・カーリカ」は少し和の雰囲気もあるので、これぞと思える日本ワインを意識的に扱っていきたい。1号店である「リ・カーリカ」では、国にこだわらず、ナチュラルワイン業界においてしっかりと責任をもてるラインナップにしたい。「カンティーナ カーリカ・リ」は、イタリアワインオンリーで…そんな感じで考えています。

先日も、ワイン部のメンバーが「こういうワインのラインナップでいきたいと思うんですけど」とワインリストを持ってきたんですが、「いや、そうじゃない。そもそもこれから、どういうワインを扱っていこうかというところから話をしようぜ」と。どんな素晴らしい銘柄のワインを扱っているかよりも、ぼくたちがどういう思いをもって1本1本のワインを選び、出していくか、そのスピリットのほうが大事だと思っています。

③ わたしのイチオシ

ぼくがいま、もっと知ってもらえたらいいなと思っているのは「ナチュラルワインであればなんでもいいわけじゃない。大切なのは、1本1本のワインの状態をきちんと見極められることだ」ということなんです。

いま、世間でもナチュラルワインが盛り上がってきています。何となくかっこよくて、難しいソムリエの知識もなく飲めて、おいしいし、最高じゃん!……みたいなムードがありますよね。流行ること自体はもちろんいいけれども、そもそもすばらしいブルゴーニュがあり、イタリアならばバローロがあり、といった伝統的なワインの流れがあって、その先にナチュラルワインブームというものがあるのだと思っています。

「流行りだから扱おう」と安易に考えるのではなく、常にイタリアワイン界全体の大きいくくりで見るようにしていますし、ナチュラルワインでも必ず状態を見極めながら、いちばんいい状態のものをお出ししています。あとは季節感もありますね。冬場だったらキンキンに冷えたシチリアの白よりも、ふくよかな味が合うなとか。そういった季節の移ろいに寄り添って選ぶことも大切にしています。

だからこそ、タバッキで飲めるワインは、「ナチュラルワインとは何か」がわかるもの…言ってみれば「ナチュラルワイン道」が見えるようなラインナップを、自信を持ってそろえたいと思っています。

④ わたしの仕事道具

フランス製シャトー・ラギオールのソムリエナイフ「マリー・アントワネット」です。店長になるという時、気合いを入れるために奮発して買いました。

持ち手の木の部分はいろいろな大きさや太さのものがあります。もともとの木の状態に合わせて手作りしているので、ひとつひとつ違うんです。これは木の部分がナチュラルな雰囲気で気に入ったのと、持ったときに一番しっくりきた形でした。自然のものなので、だんだんと色が経年変化するところも気に入っています。

ちなみにこれは2代目のソムリエナイフで、もう3年ぐらい使っています。ほかにもう1本持っているのですが、ワインを開けすぎて2本とも壊れてしまい、一度フランスに送って修理をしてもらいました。何しろうちのお店で開けるワインの本数が半端なくて……(笑)。1日20本開けたとして、1年で約7200本、3年で2万本近くは開けているかもしれません。

⑤ わたしの好きなこと

音楽です。昔はバンドやDJをやったり、音楽を作ったりしていました。いまもタバッキのメンバーで行くカラオケ打ち上げでは、ぼくの「郷ひろみ/2億4000万の瞳」でスタートするのがお決まりになっています。バラードだったら「徳永英明/壊れかけのRadio」が十八番です(笑)。

DJの感覚で、いまも「カンティーナ カーリカ・リ」で流す音楽は毎日ぼくが選んでいます。古めのロックか、ファンクの要素がある現代の音楽を中心に、その日のお客さんの状況や雰囲気を見て曲を変えることも多いです。日曜17時の開店時だったらオアシス。夜が深まってきたら徐々にテンションを上げていく感じですね。ちなみにレッド・ホット・チリ・ペッパーズやローリング・ストーンズ、ダフト・パンクがかかっているときは、お店が調子良くまわっているときです(笑)。

⑥ わたしのモットー

AIにとって変わられない仕事をすること。いまやホールの業務や、言ってしまえば料理だって、いろんなことを数値化すればAIでもできないことはないと思うんです。たとえばお客さんが好きな傾向に合わせておすすめ料理を提案することも、できるかもしれない。

でもだからこそ、絶対ロボットに変わるのは無理だよなって思える仕事をしています。お客さんの好みもあるけれど、それだけじゃなくあえてぼくが飲ませたいワインをおすすめしたりとか。ロボットはきっと、そういう挑戦はしないはず。こういう時代だからこそ、AIにとって変わられない存在でありたいです。

⑦ これからのわたし

畑から、ブドウから、ワインを実際に作ってみたいです。なぜなら、もっとワインをわかりたいから。どういう人生を送りたいか?と考えたときに、やっぱり自然のサイクルのなかに、自分がいっしょにいる、自分が存在しているって感じられる人生がいいなと思うからです。

<プロフィール>
石黒誉久、1985年生まれ、山形県酒田市出身、B型。高校卒業後ミュージシャンを目指して上京。DJや音楽活動を経て飲食の世界へ。「ワインセラー事業部」(東京・自由が丘)に勤務したのち、2014年に株式会社タバッキに入社。現在はワインを愛し過ぎる男として、ワイン部部長、「カンティーナ カーリカ・リ」で店長を務める。

企画/金沢大基(iD) 文/古俣千尋 写真/倉橋マキ