株式会社タバッキ / tabacchi

Tabacchi Journal

覚悟を持って挑み続けるイタリアンの道!齊藤隆太の「わたしの7 Stories」

① わたしのタバッキとの出会い

実家が蕎麦屋なので、小さい頃から店の手伝いをしていて料理には興味がありました。本格的にのめり込んだのは、母に料理を振る舞い喜んでもらえたことがきっかけでした。今となっては蕎麦屋も渋くていいなと思うのですが、当時は蕎麦屋よりイタリアンのほうがかっこいい!と思い、高校卒業後、1年間調理師学校で勉強しました。実は保育士の道と迷ったこともあったんですけどね。

最初に働いたのは銀座のフレンチでした。その後は創作和食のお店を経験したのち、二子玉川にあったイタリアン「吉右」へ。カウンターもテーブル席もある「リ・カーリカ」くらいの規模のお店でした。もともと人と接することがあまり得意ではなくクローズドキッチンで働いていた自分も、オープンキッチンで働くことでお客様と話すことが好きになりました。

料理人として2〜3年働いたのですが一度料理が嫌いになってしまい、この世界を離れ、趣味で続けていたボルダリングのスタッフとして1年ほど働くことになったんです。接客の形は違っても、一人ひとりに合わせたサービスを提供するという点では、飲食とボルダリングに近い部分を感じていました。でも、やっぱり料理が楽しいと思い直し「もう一度飲食の道で行こう」と腹を決め飲食の世界に戻ったんです。そして数年してからタバッキが人を募集していると耳にしました。

特に「リ・カーリカ」と「あつあつ リ・カーリカ」はその頃からオシャレで活気があるいいお店だなと思っていました。売り上げが良かった日に自分へのご褒美として行ったり、お客さんとして訪れたり催事にも参加していましたね。学芸大学のイタリアンで働く料理人の先輩にくっついてきた僕のことを、藤田が覚えてくれていたりして、忙しいお店なのにすごいなと嬉しかったのを覚えています。ここならスキルアップもできるし、吸収できるものも多いと感じタバッキを受けて入社しました。

でも入ってみたら、やっぱり厳しかったです。外から見ているぶんには和気藹々とした楽しげな雰囲気ですが、一人ひとり食材への熱量や意識が高いし、ストイックな人が多く、ワインへの想いもそれぞれが強く持っている。みんなパフォーマーなんだな、これだけの熱量があるからこそああいうパフォーマンスができるんだなと感じました。

② わたしのタバッキでの役割

今は「あつあつ リ・カーリカ」の店長のほか、「あつあつ リ・カーリカ」のスーシェフ、ワイン事業部部員と、3つの役割を任されています。正直めちゃくちゃ大変です(笑)。でも料理人兼ワイン事業部の人間は僕だけなので、特化型ではないけれどバランス型としてできることがあるかなと思っています。お店のワインも自分でリストを決めて選んでいます。料理をしながらワインの説明もしてお客様とも会話して……「すごいね」という声が聴こえてくると、テンションが上がりますね(笑)。

でも入社した当時は、「スッキリ系のワインをちょうだい」と言われても品種すら分からず、とにかくワインを勉強しなければいけませんでした。それで自分なりに殴り書きのようなメモを書いていたんですが、それを見つけた酒井が「会社で共有した方がいいよ!」と言ってくれて。ポエムチックな言い回しをしていたことを認めてもらえたんです。それまではずっと石黒がワインの説明を書いてくれていたのですが、「あつあつ」で扱っているワインの説明をひとつを任せてもらえることになり、2個3個……と今では僕が担当させてもらえるようになりました。

店長としてはお店の雰囲気を大切にするのはもちろん、下の子たちにアドバイスしたりサポートしたり。どの仕事も好きなのでやりがいがあります。

③ わたしのイチオシ

お店の雰囲気と空間です。タバッキは店舗ごとに色が違うのですが、「あつあつ」は、他の3店舗に比べてお客さんと僕たちも、お客さん同士も距離が近いので、とにかく繋がりが強いお店。個人的にはここが一番好きですね。理想としては端から端、テラス席のお客様まで一緒に喋りたいくらい、お店が一体化する感じがいいなと。料理の説明をしていると、それを聞いていた隣の方が「自分もそれを……」と連鎖してくれるも楽しいです。「これ作るんですけど、お客様も一緒にどうですか?」とこちらから聞くこともあります。もちろんひとりでゆっくり飲みたいお客様やお連れさまと話したい方もいるので、そういう気遣いも忘れないようにしています。

もうひとつが、ナチュラルワインを好きになったきっかけの「a-iuto!」です。北イタリアのワイナリーTrincheroのワインで、雨が多く収穫量が不十分なために複数の葡萄をかけ合わせて作ったことから「助けて」という意味の言葉と、輸入者であるヴィナイオータさんの息子さんのお名前を取って名付けられたワインなのですが、そうしたバックストーリーも面白くて毎年購入しています。

④ わたしの仕事道具

最初のフレンチを辞めたときにもらった包丁です。片刃だったのを両刃にし、日々ビカビカに研いで大事に使っています。柄が木じゃないので全部磨けるし、食洗機にも入れられるんですよ。そこまで高いものではないですが、スタッフ同士が仲が良く慕ってもらえていたお店だったので、その気持ちを大切にしたくて今でも使い続けています。

ちなみに左手に入れているタトゥーは、イタリア語で「最高」を意味する「Supremo」という言葉です。料理の道を諦めかけたときに出会ったスタッフの子が、ものすごくポジティブで僕とは真逆の人で、会うたびに「隆太さんは最高です!」「料理をやったほうがいいですよ!」と心からの言葉をかけてくれたんですよね。その後押しもあって、もう一度料理をやろうと決意することができました。また自分からも人からも見える場所にすることで、日々意識を高め自分を奮い立たせられるようにしています。イタリア語で入れたのは、イタリアンから逃げないという覚悟を込めているからです。

⑤ わたしの好きなこと

やっぱりクライミングですね。クライミングって自分にとって限界のコースを、1週間〜10日、夢に出るほど延々挑戦し続けるんです。それであるとき、突然限界を突破して登れるようになると、自分が強くなっているのを実感するし、やればできる、諦めなければ報われるところが好きでハマっていきました。

でもそれだけじゃなく、その日初めて出会った人と相談やアドバイスをしながら登ったり、友達同士で競ったりして、何人かでアタックする「セッション」が僕は好きで。普通に生きていたら小中学生と知り合うことなんてまずないし、60〜70代の方と飲みに行く仲になったりしないと思うんですけど、クライミングはとにかく出会いの幅が広く、師匠や弟子、友人ができたりして人と人とが繋がり、思ってもみなかった輪が広がるんです。そういうところが大好きで。やっぱり僕は、みんなが一体化する場が好きなんです。

⑥ わたしのモットー

感謝の気持ちを忘れず言葉にするようにしています。照れ臭いですけど、ありがとう、出会えて嬉しい、あなたと話して救われた、といった気持ちを言葉にして伝えるのってすごく大切だし、何度言われても嬉しいじゃないですか。感謝の気持ちが多いほうが幸せな時間を過ごせるし、人生が豊かになると思います。僕も不器用なのでなかなか言えないこともありますが、その気持ちは常に持つようにしていて、酔うとついそういう熱い話をしてしまいます。

⑦ これからのわたし

社長の堤も常々言っていますが、僕も繋がりって一番大切なことだと感じていて。空間や人との繋がりを大切に、後輩たちにもそれを伝えていきたいです。話をしなければ分からないことってたくさんあるので、スタッフ同士で言い合うときありますが、話をすることで気持ちを伝えられる空間を作りたいですし、自分が話し役や聞き役になって救いのポジションでありたいと思っています。
もちろん料理もワインももっと勉強したいという目標もありますし、自分の意思をもっと前面に出していけたらいいなと思っています。

<プロフィール>
齊藤隆太、1990年生まれ、東京都荒川区出身、A型。蕎麦屋を営む両親のもとで育ち、調理師学校で1年間学んだのち、10代で銀座のフレンチに入店。その後創作和食店を経て、二子玉川のイタリアン「吉右」に務める。退職後、一度は料理の道を諦めボルダリングスタッフとして働くが、再び飲食業を選びタバッキに入社。現在は「あつあつ リ・カーリカ」の店長とスーシェフを兼任しつつ、ワイン事業部にも在籍している。シャツを着たときに背中が破けたことがあるほど、タバッキ切っての筋肉キャラとして知られる。

企画/金沢大基(iD)文/木口すず 写真/倉橋マキ