株式会社タバッキ / tabacchi

Tabacchi Journal

生産者さんの想いと僕らの料理を挟んで…フォカッチャとワインの店「TUTU(トゥトゥ)」――株式会社タバッキ代表 堤亮輔

2024年10月に新業態の店舗を学芸大学駅高架下にオープンしました。

一店舗目の店「リ・カーリカ」を学芸大学(以下、学大)に出して12年。都立大学や恵比寿にも店舗を展開してきましたが、僕の中でやっぱり学大は特別な場所。学大高架下リニューアルプロジェクトに携わり、お昼の需要に応えられてテイクアウトができるちゃんとおいしいお店が欲しいよね、という話題になったとき僕が新しくやってみたいことと重なってオープンさせることになったのが、フォカッチャとワインの店「TUTU(トゥトゥ)」でした。

いつでもどこでも気軽に…イタリア料理をフォカッチャに挟んで

TUTUは、国産小麦を使った自家製フォカッチャにハムやイタリア料理を挟んだボリュームのあるフォカッチャサンドとナチュラルワイン、カフェを提供する、バルとスタンドの間のようなお店。イートインもテイクアウトもできます。

サンドイッチは組み合わせややれることが無限大。様々な可能性が広がるなと考えました。タバッキならではのレストランクオリティの惣菜を調理してサンドイッチに挟めるのも強みです。気軽に食べられてシーンを選ばないイタリア料理。そんなイメージです。

サンドイッチと決めて最初に思い浮かんだのはパニーニ。イタリアのパニーニ屋みたいにショーケースにパニーニを積んで、オーダーが入ったら温めて出そうと。でも、ふと、それだとタバッキらしくないなって思い直しました。僕たちがこれまで大切にしてきたことはオーダーが入ってからお客さまの目の前で料理をすること。そしてお客さまにはそれを見ながらワインを飲んでもらったり、出来たてを食べてほしい。

それで次に候補にあがったのがフォカッチャでした。実は僕自身、あまりパンが好きではなくて(笑)。だからこそチャレンジしたくなり、国内外のフォカッチャ屋のことを調べたり、研究を繰り返しました。グルテンの重さを控えるため高加水の軽めのフォカッチャにして、挟むものは豪華にしてボリュームを出す。さらに見た目も魅力的にしたい。試行錯誤の末、出来上がったのが今のカリカリしていて軽い食感のフォカッチャサンドです。

ロゴや店内のタイルなど至る所に見られるキーカラーの鮮やかなグリーン

フォカッチャサンドが繋ぐ生産者さんの想い

小田原・春夏秋冬さんの無農薬キウイさんを生ハムとゴルゴンゾーラと

TUTUを出すことが決まりこれまでタバッキが出会ってきた生産者さんの顔が思い浮かびました。長谷川さん(北海道厚沢部町のアスパラ農家)のアスパラをフォカッチャサンドにしたらうまいんじゃないか…それにマスタード風の卵のソースを合わせたり。アイデアがどんどん出てきて。フォカッチャサンドは生産者さんの色々な食材を挟んでお出しできるから、食材の味わいそのものに加え、生産者さんの想いを届けやすい。季節によって挟むものは変わるため常に食材を探し続け、生産者さんとの繋がりもどんどん増えていくと期待しています。

心地いいコミュニティを育む、街の宿り木のような場所に

フォカッチャサンドの店ではありますが、僕らの根幹にあるナチュラルワインは一緒に出したくて、バルっぽさとスタンドっぽい雰囲気のどちらも感じられる、いいとこどりの店づくりをしました。たった8坪の小さな店なので、店内はスタンディングでフォカッチャを食べたり、ワインやコーヒーを飲む空間に。立ちながら飲んで食べておしゃべりを楽しむのは、まさにイタリアのバル文化。夜はワインをパッと飲んで帰り、翌日にはコーヒーを飲みながらフォカッチャを食べる。スタッフとお客さまの距離が近くて居心地のいい場所…そういうコミュニティが僕自身好きで、フレンドリーな街の宿り木のような場所にしようと決めました。逆にテラスにはテーブル席を多く配置して食事をゆっくり楽しめるスペースにしました。

クリエイティビティを発揮できる職場

タバッキ全体に言えることですが、TUTUでも若い人が躍動して働いてほしいと考えています。現在、タバッキでは全店舗、全員に料理開発に参加してもらっています。僕や各店舗のシェフだけがメニューを考えるのではなく、新人にもチャンスがあります。大切にしているのは、「お客さまの顔が見えているか?」「店舗のコンセプトを理解して考えているか?」ということ。フォカッチャサンドは料理開発がしやすくやりがいにつながりやすいはず。どんどん新しいアイデアを出してほしい。もちろん何回も試作をしなくてはいけないし、ダメ出しもあります。でも、完成された料理を食べてくれたお客さまから「おいしい!」と一言いただき、それは自分が作ったメニューであると伝える…そういう会話へと繋がり、いい循環ができていくのが理想です。チャレンジに前向きで、ルーティーンワークではなく創造力が必要な仕事をしたい人にはぴったりだと思います。

大きな可能性を秘めたTUTUのこれから

TUTUのフォカッチャサンドは、冷めてもおいしく開発しているので、今までのレストラン形態に加えケータリングやUberEatsなどでも提供しています。店舗に来られない人にもそれらのサービスを通してTUTUを楽しんでもらえたら嬉しいですし、可能性も広がるかなと思っています。

企画/金沢大基(iD)文/田中亜衣 写真/曽我美芽