株式会社タバッキ / tabacchi

Tabacchi Journal

新鮮な食材を求めて足繁く通う神奈川・三浦。その魅力とは?

日本国内の食材を使ってイタリア料理に仕上げる「ジャパニーズイタリアン」を掲げ、こだわりの食材を求め産地や生産者をたびたび訪れているタバッキ。

今回は、オーナーで総料理長の堤が3年ほど前から週に2回ほど通い、今ではスタッフも連れて主に野菜や魚介を仕入れている神奈川・三浦に注目。三浦の魅力、そして産地に足繁く通う理由を聞いた。

国内の食材で仕上げる「ジャパニーズイタリアン」

――国内の食材に注目したきっかけは?
今は流通が盛んになって日本にもイタリア産の食材がたくさん入ってきます。なので、イタリア料理店ではイタリア産の食材を使うところも多く、最初は「リ・カーリカ」でもそうしていました。さらに、イタリア野菜を日本で作る農家さんも増えてきたりと、食材選びの幅が広がってきたんですよね。その中で、僕らがやりたいイタリア料理、食材選びって何かなと考えたときに、海外から何日間もかけてやってくる食材ではなく、日本の食材を使いたいなという結論にいたりました。それが僕らがよく言っている「ジャパニーズイタリアン」としては一番いいなと思ったんです。それからは、シェフ仲間や目利きのバイヤーさんからの情報をもとに生産者さんを探し、できる限り直接会いに行き、食材選びをするようになりました。今では野菜も肉類、魚介もおもしろい生産者さんのものが揃うようになりました。

お客さんの喜ぶ姿をイメージしながら通い続ける三浦

――三浦に通うようになったのはなぜですか?
もともと三浦は僕にとってゆかりのない場所だったのですが、お世話になっているワインショップの方から誘われて3年前に訪れたのがきっかけです。ちょうど、東京近郊の生産者さんを探していたのと、知り合いのシェフが何人か通っているのを見てて興味もあったので。

――実際に訪れてみてどうでしたか?
とにかく気持ちがよかった。海も山もある風土が気に入りましたし、生産者さんたちの人柄も好きでした。野菜や魚介などの食材も豊富で、食材との出会いが楽しく、季節も感じられるのも気に入った点です。

――そこから週に2回通うように?
三浦に行くと「こんなにいい食材がこの値段でたくさん手に入るのか」と驚きました。そういう食材を仕入れて料理を作ってお客さんに提供したら喜ぶだろうなって思ったんです。例えば、採れたての新鮮野菜をたっぷり使ったサラダをリーズナブルに提供できたら喜んでいただけるだろうな、とか。食べる人たちのことをイメージしながら買い出しをするのが楽しくて通いはじめました。

――天候が悪いときも通っているんですか?
はい。実際に市場を訪れると、欲しかった野菜や魚介が全然ない時もあります。天候に左右されますからね。それでも行くようにしました。農家さんや漁師さんの大変さを間近で知ることができますし、そういう時こそできるだけ話をして、買えるものがあれば仕入れて帰ってきます。そうすることで生産者さんのことを少しでもサポートできるので。実は、コロナの影響でこの1年はなかなか行けなかったのですが、ここ数ヶ月でまた通いはじめています。久々に訪れるとみんな歓迎してくれて嬉しかったです。

――仕入れの日のスケジュールを教えてください。
都内を朝8時に出発してまずは大型農産物直売所の「すかなごっそ」に行きます。だいたい9時過ぎに到着して、9時半のオープンまで並びます。同業者も多い人気の直売所なので。オープンしたらお気に入りの生産者さんの野菜をまず手に取ります。

――主にどのような野菜を仕入れるのですか?
原田節子さんのセロリはミネラル感が強くて、ちょっと塩味もあって食感もいい。他とは別格なので、あれば必ず仕入れます。あとは、辛子菜や水菜などの葉物野菜がおいしいです。もりもりのサラダを作って提供するので、毎回どっさり買います。「すかなごっそ」での仕入れは争奪戦ではあるのですが、同業者同士でちょっと様子を見ながら、全部取り切らず分け合えるようにしたり、協力もしてます(笑)。

――その次はどこに行かれますか?
長井漁港に行きます。朝出発してすぐ、ハンズフリーに設定したスマホから漁港センターの魚屋の店長に電話して、あらかじめ今日のおすすめを聞いておきます。その時点で良さそうなものがある場合は、先に神経締めをお願いしておくこともあります。到着すると、既に発砲スチロールにおすすめが積んであって、そこから最終確認をして仕入れています。

――どのような食材を仕入れますか?
旬の魚もそうですし、サザエなどの貝類も仕入れますね。あと、長井漁港は市場としての役割もあるので、他の漁港であがった魚介もお願いしています。富山のホタルイカとか白子とか。

――時間がない中でスムーズに仕入れができるのはいいですね。次はどちらへ?
高梨農場に行きます。キャラの濃い家族が経営されている農場で、毎回親戚の家に来たような気分になります(笑)。ここでは、黒キャベツやチーマデラーパ、プンタレッラなどのイタリア野菜と、夏にはパプリカ、ズッキーニ、なす、水なすを仕入れています。高梨農場さんの野菜はとにかくおいしい! 特に水なすが絶品で毎回どっさり買います。

――その後は?
最後に佐島漁港に行って、主にタコやイカ、しらすを仕入れます。しらす屋はたくさんあるのですが、僕たちは「平敏丸」で仕入れています。しらすの処理が一番いいなと思っていて、生しらすはもちろん、釜揚げしらすもおいしいです。

――そして東京へ帰ると。
だいたい13時半にはお店に到着します。

――買い出しに行く前に、何を買うかはだいたいイメージされてるのですか?
コロナ前までは、毎週月曜日と金曜日に仕入れに行っていたのですが、前日に3店舗(リ・カーリカ、カーリカ。リ、あつあつリ・カーリカ)からオーダーをもらって出かけてました。食品卸業者さんみたいですよね、僕(笑)。さらに、現地で僕が気になった食材や使ったことのない食材を買って、各店舗のスタッフにお題として置いてくることもしています。何か作ってみて!って(笑)。農家さんからのアドバイスも共有しています。

産地を訪れることがスタッフの成長につながる

――スタッフと一緒に仕入れに行くこともあるのですか?
最初の頃は、順番に全スタッフを連れて行くと決めていました。第一次産業の現場を見て欲しかったのと、料理はここからはじまっているということを感じて欲しいと考えました。僕たちのチームワークは、お店にいるスタッフだけじゃなくて食材を作ってくれている生産者さんも含めてなので。

――生産者さんも含めてチームワーク。タバッキらしいですね。
生産者さんと、どこまで距離を縮めていけるかが、いい料理を作るきっかけになり近道だと思います。おいしい食材があれば、料理は軽く手をかけるだけでもおいしくなる…。それが一番大事だということを伝えたくて。あとは、車に往復2時間ほど乗るので、スタッフとゆっくり話す機会にもなりますね。

――生産者さんとのコミュニケーションはタバッキにとって不可欠なことなのですね。
そうですね、ずっと続けて行きたいことのひとつです。コロナの影響で今はなかなか難しい部分もありますが、逆にこういう状況だからこそ繋がりがさらに強まった生産者さんもいます。

――どんな生産者さんですか?
例えば函館・高野鮮魚店の安田さんです。空輸便が減ってしまって鮮度のいい魚が入りづらくなってしまったのですが、安田さんの保存性を高める加工技術が素晴らしいんです。なので、時間がかかったとしても函館のいい食材を仕入れることができます。さらに僕たちにはその食材をさらにおいしく提供できる技術があると思っています。だから新鮮だけが全てじゃないんだなと気付かされましたね。まだ訪れたことがないので、落ち着いたら訪れたいと思います。

――新しい出会いにワクワクしますね。
そうですね。なので、生産者さんに会いに行くことはやめられないですね(笑)。三浦だけでなく、今後も北海道から九州まで日本全国多くの生産者さんとの繋がりを大切にしていきたいと思っていますし、またこのジャーナルでもご紹介していきます。

企画/金沢大基(iD) 文/田中亜衣(iD) 

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