株式会社タバッキ / tabacchi

Tabacchi Journal

“おいしい”は当たり前、“楽しい”を届ける料理人・服部新の「わたしの7 Stories」

① わたしとタバッキとの出会い

「料理を作るのが楽しい!」と最初に思ったのは、小学3年の時。男4人兄弟で、母がママさんバレーをやっていたので、ある日ぼくが4人分の弁当を作ることになりました。弟にはキャラ弁、食べ盛りの兄達にはがっつり弁当を作ったら、すごく喜んでくれて。それがとても嬉しくて、以来よく料理の手伝いをやっていました。進路を考えた時にも将来は料理をやりたいと思い、調理科のある高校へ進み免許を取って、この世界に入りました。

タバッキとの出会いは、ナチュラルワインを扱っている武蔵小杉の店「オージオソット」で働いていた時のマネージャーの紹介です。堤と仲がよく、ぼくがもっと料理の勉強をしたいと相談したら、当時開店して間もなかった「リ・カーリカ」を紹介してくれました。最初のイメージは、「すごく忙しそうな店」。でもぼくは、活気があって、出会いも多い、忙しい店が好きなんですよね。ここでやってみよう!と思って、2014年、25歳の時に入社しました。

② わたしのタバッキでの役割

洗い場からのスタートでしたが、ぼくは何でもやりたいタイプなので、常に「それ、おれがやります!」「あっちがやりたいです!」と言っては、やらせてもらっていました。入って3ヶ月ぐらいで調理もさせてもらえるようになり、毎日違うポジションにつきながら、いろんなことを経験させてもらいました。

特に大きかったのは立ち上げ時から本格的にやらせてもらった「あつあつ リ・カーリカ」での経験ですね。第一に学んだのは、空間づくりです。料理やワインがおいしいのは当たり前で、それ以外の部分が大切なんだなと。キッチンのぼくらはお客さんから常に見られているわけです。「見ていて楽しい」とか「きびきび働いている姿を見ていて心地よくお酒が飲める」と言っていただくのですが、そういう自分の動きや表情はすごく意識しています。お客さんのこともきょろきょろと、常に見ています。お客さんから呼ばれるのは、負けだと思っているので。

そしてもう一つは、楽しむことですね。自分自身が楽しんでいれば、お客さんも絶対楽しんでくれる。そう考えると、ぼくの仕事は俗にいうシェフとは毛色が違うかもしれません。空間とか雰囲気とか、目には見えないものを見ようとしている感じですね。

キッチンに立つ時間以外では、メニューや物販の料理研究開発もしています。4号店である「リ・カーリカ ランド」のオープンとともにラボができたので、チームで新しいメニューを持ち寄って食べて、いろんな意見を出し合います。いまいる「カンティーナ カーリカ・リ」には自分と同じぐらいの経験値と、自分とは違う感性やバックグラウンドを持った料理人がいるので、みんなで一緒に料理を考えるのがとてもおもしろいなと思っています。

そのほか、衛生管理部にも入っています。掃除をはじめ、服装や髪型など身だしなみについて考えていきたいと思っています。やっぱり身だしなみは大事。ぼくは月に2回髪を切りに行っています(笑)。

③ わたしのイチオシ

「素材を活かした料理」です。シンプルに、それぞれの食材がどういう調理法ならば一番おいしくなるのか…それを考えながら、質のいい食材を見つけ、調理法と技術で食材を活かせるような料理を作りたいと思っています。インスタ映えする見た目だったり、「これとこれを組み合わせるなんておもしろい」みたいな凝ったもののほうが、受けるのかもしれません。でもぼくは、そういうのはしたくないんですよね。

たとえば安芸高田市の鹿肉を使ったグリーヴェ(ハンバーグ)だったら、その野生の鹿が何を食べていたのかを調べて、その情報をもとに調理をしたりソースを作ったりしています。お客さんにはそこまで知っていただく必要はないけれど、料理をおいしく食べてもらうことで思いが伝わればいいなと。

グリーヴェ 紹介動画はこちら>

「あつあつ リ・カーリカ」にいたときは、堤にチェックをしてもらいながら「あつあつ」のための料理を作っていました。もちろん料理への愛はありますが、それは100%自分の料理とは言えなかったんです。ですが、その経験を活かしたいまの「カンティーナ カーリカ・リ」では自分のやりたい料理をやらせてもらえてるなって感覚があります。これからも、素材を活かした料理を極めていきたいです。

④ わたしの仕事道具

ミソノUX10の包丁。この業界に入ってから12年ずっと使っています。やっぱり手に馴染んでいるんですよね。途中でいろんな包丁を使ってみて、もっと切れ味のいいものもあったけど、手に持った感じがこれじゃないとダメなんです。

ぼくが最初に買った包丁で、料理人ならみんなが知っているようなごく定番のものです。でも、包丁って研ぎ方でまったく変わるんですよ。活かすも殺すも、研ぎ次第。研ぎ方によってはどんどん小さくなってしまうけれど、ぼくのは12年使っていてもほとんど減っていません。研ぐタイミングは月イチぐらい。肉を切るときの感覚で、こいつが「そろそろだよ」と教えてくれます。ぼくにとって、大事な相棒です。

⑤ わたしの好きなこと

自転車です。身体を動かすことが好きなので、何も予定がない休日は自転車に乗ってサイクリングするか、メンテナンスをしています。あとは部屋の模様替えとか好きですね。流木を拾ってきて、天井から吊るしてみたり、ドライフラワーと合わせて部屋に飾ってみたりしています。

⑥ わたしのモットー

「笑顔」ですね。関わる人すべてが笑顔であったらいいなと、いつも思っています。だって、笑顔を見てイヤな気持ちになる人っていないじゃないですか。プラスしかないし、イヤなことを忘れられる。ぼくがお店で空間や雰囲気を大事にしているのも、それと同じことなんです。

もうひとつ、好きな言葉があります。それは「成功を学ぶためには、まず失敗を学べ」というマイケル・ジョーダンの言葉。昔バスケをやっていたので出会った言葉ですが、これはまさに仕事でもそうだなと思います。行動をおこさなければ失敗もない。とりあえず成功失敗を考えずにまず動け、ということかなと解釈しています。ぼく自身、頭よりも身体を先に動かしちゃいますし、見切り発車もよくしちゃうんですが、失敗を怖れずにやってみることを大切にしています。

⑦ これからのわたし

新しいことに挑戦し続けること、そして自分だけじゃなく、ほかのスタッフを輝かせてあげること。この会社にいて、このお店にいるからこそ、意識していきたいなと思っています。

<プロフィール>
服部新、1989年生まれ、神奈川県横浜市出身、O型、幼少期から家族に振る舞ってきた料理で人を喜ばせたいと調理科のある高校に進学し料理の世界へ。「オージオソット」(神奈川・武蔵小杉)に勤務したのち、2014年に株式会社タバッキに入社。「あつあつ リ・カーリカ」の立ち上げを経て、現在は「カンティーナ カーリカ・リ」でシェフならびに衛生管理部部長を務める。趣味はサイクリングと部屋の模様替え。

企画/金沢大基(iD) 文/古俣千尋 写真/倉橋マキ